会長挨拶

会長挨拶

2024/2025年度 第20代会長 熊谷 圭介(長野大学)

 このたび、7月の理事会において、第20代の会長を務めさせていただくこととなりました。言うまでもなく観光は、豊かな社会や、人間ひとりひとりの生活と生きがいの実現において、いっそう重要性を増し、観光研究の主要な学会として日本観光研究学会の果たす役割もますます拡大していくものと考えられます。私自身、その会長としての重責に身が引き締まる思いをしております。
私は長い間、観光計画のコンサルタントに身をおき、実務として観光振興や、観光による地域づくりに長らく関わってきた者です。研究者として、また学会運営の執行部として、甚だ微力ではございますが、会員の皆様、理事・監事、事務局のご協力をいただきながら、本学会の発展に向けて努めてまいる所存です。
さて本学会は、1986年に「日本観光研究者連合」としてスタートして以来、観光に関する研究や提言を推進する組織として、活発な活動が継続されてきました。初代会長は、私の大学時代の恩師・故鈴木忠義先生(東京工業大学名誉教授)であり、学会の歴史は私の観光に関わる仕事の履歴ともほぼ重なっています。
ただし学会設立の40年ほど前と、現在では、観光を取り巻く環境や、観光に期待される役割は大きく様変わりしました。観光立国推進基本法の制定や観光庁の創設、IT革命によるSNSやAIの普及等の一方で、現時点でもその影響が残る世界的な疫病、国・地域間の紛争、地球環境問題、異常気象や大地震がもたらす災害、国内の各地で進む過疎・高齢化等々、混迷した国際社会、国内情勢のなかで、観光研究が向き合うテーマは広がり、複雑化しているようにみえます。
このような状況のなかで、持続可能な観光の実現に向けて、本学会における研究活動を進展させていくために、これまで以上に多様な分野の研究者が切磋琢磨と交流を継続したり、政策サイドや産業界等の実務者との連携を深めていくこと、海外の研究組織とネットワークしていくことが重要であり、本学会の肝心と考えています。またオーバーツーリズム問題やリスポンシブルツーリズムが着目される一方、若い世代に旅のもつ魅力と意義を伝え豊かな旅の実現を図っていくうえで、一般ユーザーへの働きかけも視野に入れ、活動の裾野を広げていくことも必要になろうかと思います。
これを推進していくことは、橋本前会長が始動した「学会ビジョン」を実現させていくことに他なりません。この学会ビジョンは、歴代の執行部の努力で一般社団法人化した本学会において、近未来を展望する指針として策定されたもので、具体的にはいくつかの特別研究プロジェクトが立ち上がった他、40年近く経過した本学会の研究活動を振り返りつつ、その蓄積のうえに、次の時代を見据え観光研究のあり方を会員の皆様と考え拓いていくような企画も位置づけられています。2年間の会長任期中に、学会ビジョンに基づく取組を前進させていきたいと考えています。
以上の所信を念頭に微力を尽くしてまいる所存ですので、会員の皆様のご指導、ご協力をよろしくお願い申し上げます。