会長挨拶

会長挨拶

会長 橋本 俊哉(立教大学)

 2022-2023年度の2年間、第19代会長(一般社団法人日本観光研究学会第2代会長)を務めさせていただくこととなりました。
 1986年に発足した本学会は、当初「日本観光研究者連合」と称しておりました。観光を「研究する」ための研究者集団を目指して命名されたことは、当時を知ることのない会員の皆様にも容易に理解できるでしょう。「観光に関する研究の促進を図り、観光の発展に貢献する」ことに賛同した120名余りの小さな団体として始動した本学会は、本年で36年目を迎えました。この間、先達のご努力によって会員数は増加を続け、現在では千人を超える日本最大規模の観光系学会に発展して参りました。一般社団法人として新たに始動するこの機会に、今一度原点に立ち返り、立ち上げに尽力された先生方の想いを、改めて会員の皆様に共有したく思います。
 本学会はここ数年、幾多の改革を進め、この春、念願の一般社団法人化も実現しましたが、課題も山積しています。本学会では今後、以下の課題に取り組んで参ります。
1. 「学会ビジョン」の推進体制の確立
 学会ビジョンは、法人化された本学会の近未来を展望する指針として、2021年12月の理事会において骨子案が了承されました。2022年度は各種委員会の役割や目標年次を明確にし、2023年度からの実現に向けた準備を進めます。
2. 研究環境の充実
 多彩な情報をお持ちの会員の皆様が、いかに交流して刺激しあい、斬新な研究テーマが芽吹く場をいかに提供しうるか。そのための研究環境の充実がきわめて重要と考えます。交流促進委員会は、若手研究者や新入会員などが気軽に参加できるネットワーク、コミュニケーションの場を創ることを目的に設置された委員会です。当委員会を中心に、オンライン会議も有効に活用しつつ、学会員の交流機会をより活発にして参ります。
 また、連携・協働による研究機会の提供も重要です。本学会では、行政や公的な観光推進組織などとの連携・協働を積極的に進めるための新たなガイドラインを策定し、2021年4月より(公社)日本観光振興協会との共同研究を進めています。今後も積極的にこうした連携・協働を進めることで、会員の皆様に新たな研究機会を提供します。
 なお、2021年12月の全国大会学術論文発表会より、査読付き論文制度を新たに導入することで、より幅ひろい領域の、質が保証された研究が公開されることとなりました。会員の皆様の研究成果をより迅速に公表できるよう、『観光研究』も含めて、引き続き査読体制の整備を進めます。
3. 組織運営体制の強化
 会員数が安定的に千人を超える学術研究団体となったことで、組織運営の基盤としての法人化は欠かせないと考え、2022年4月、一般社団法人へ移行しました。今後は定款に基づく規程類の整備や会計の充実など、一般社団法人としての組織運営体制を軌道に乗せるべく努力して参ります。

 2020年に入ってからの新型コロナウィルスの世界的な感染拡大は、移動を前提とした旅行・観光関連産業に甚大な影響を与えるものでしたが、こうした厳しい環境を経験したことで、豊かな生活の実現に向けて、観光が欠かせない存在であることを、私たちは改めて認識することとなりました。
 こうした意味においても、本学会は、我が国の観光系学会の中核として、今後ますます重要な社会的役割を担ってゆくこととなるでしょう。甚だ微力ではありますが、皆様のご協力をいただきながら学会運営に尽力させていただく所存です。皆様方のご指導、ご鞭撻、そしてご支援のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。